トツドル!

特集!HKシスターズ!⑴

翌日の朝。教室に着いた早々と翔菜に指差しされた。

「芽衣、やりすぎ! 」
翔菜だけではない、サツキや美里も頷く。
「いくら雨でライブが中止なりそうだからって、何も芽衣が脱ぐことないだろう。」
「そ、それにね、芽衣ちゃん、南畝さんを巻き込んだらイケないと思うんだ。」
ライブの内容はそっちのけ。
三者三様にライブ前に衣装を脱ぎ捨てた方に話が出た。
「…はい、充分に反省しています」
結果は大盛り上がりしたからいいと思うんだけど…。
「HKシスターズ、暫く活動中止かなぁ~」
翔菜が縁起でもないことを口走る。
「そうだなぁ、ご当地アイドルがいきなり脱ぎだすなんて前代未聞だからなぁ」
続いて美里が!
「ってことは、学校からも呼び出しが? 」
最後はサツキが言う。
「ま、まさか、あり得ないよー」
と、不安なのは隠せない。そうだった。こんなことが学校にバレたらアイドルどころじゃない!
高校生活が台無しになる。
スマホのバイブの振動が伝わる。
画面を見て確認をしたら香織さんからだった。

「香織さん? 何だろう⁇ 」
と、送られたメールをチェックする。
「ほら! 多分、運営側からのクレームを伝えてきたに違いない」
翔菜がしつこく言うが、とりあえずメールを直視する。
「なんて書いているんだ? 芽衣」
美里が画面を覗き込む。
私は画面を見て閉じて深呼吸をした。
「や、やっぱり芽衣ちゃん…」
サツキが心配になっていた。
一秒、二秒、三秒と。
そして満遍な笑顔を見せてた。
「な、何、ナニ? 」
翔菜が気持ちの悪い感じで私を見る。それは美里にサツキも。
「ほら! ケーブルテレビに私達のコトが放送されるって! 」
三人にスマホ画面を見せた。
香織さんから送られたケーブルテレビの番組表を。
「HKシスターズ特集だよー。絶対に録画しなきゃ! 」
私が慌てて家にいるママにメールを送ったのは言うまでもない。
「でもさぁー、あのライブがまるまる放送されるってことはないね、絶対! 」
翔菜がキッパリと言い切る。
「だよなぁ。芽衣達が脱ぐところはやはりカットされるだろうな」
「そうだね。芽衣ちゃんの予期しない行動をまるまる放送したらそれこそ姫川市のイメージダウンだから」
美里やサツキまでキッパリと言い切る。
た、確かにそうかもしれない。しかしそれが無かったら私達HKシスターズの初ライブが成功しなかったワケで…。
「でも芽衣の初ライブ、私は好きだなぁ。アイドルのオーラはわからないけどステージにいた芽衣達はスゴかった」
「翔菜…ありがとう」
一番辛口だろうと思う翔菜が褒めてくれた。
「でも二度と衣装を脱がない! 投げない! あれは場を盛り上げたんじゃなくて、言い方を変えたらただの痴女だよ」
ち、痴女!
「…だよな」
美里やサツキも頷いた。
「反省しています」
私のパフォーマンスはただの恥晒しになっていました。

トツドル!

デビューライブ⑶

 ステージに立つと叩きつけるように降る雨が一瞬にして新しい衣装を濡らした。一緒に立つ香織さんも同じだった。
「これでは歌えてもダンス出来るかなぁ」
濡れて滑りそうなステージを見て思った。
「すいませーん」
と、慌ててスタッフさんが数人出てきてモップで雨水を拭き取った。
それでも雨が降っている。
長雨になりそうならイベント自体が中止になる。
ステージからテント内の観客席にいる翔菜達が見えるけど、今の私達を心配そうに見ている。
「延期になりそうね…」
香織さんも呟いた。
ステージ裏を見ると広峰さんがスケッチブックに『開始します』の文字が?
香織さんも見て頷く。
「始めるよ、芽衣ちゃん」
「はい」
香織さんがヘッドマイクを口元に向けた。
「みなさん、今日は雨の中ありがとうございます。今から私達HKシスターズの初ステージを始めます」
流暢な台詞を言って始まったが…やはり気になるなぁ。
私は香織さんに言った。
「香織さん、もう雨で衣装がベタついているから脱いじゃいましょう! 衣装下は普通の水着ですし」
会場が一気にどよめく。
「このままでは気になってダンス出来ないし、ヒールは滑るから」
一気に衣装を脱いだ。
「そーれ! 」
脱いだ衣装を観客席に向かって投げた。
「め、め、め、芽衣ちゃん?? 」
「香織さんも脱ぎましょう! 私だけ脱いでもお客さん喜ばないですから」
「ちょ、ちょっと芽衣ちゃん! 」
私は香織さんの衣装も脱がし始めた。
「め、め、芽衣ちゃん? 」
「さあ! 脱ぎましょう、香織さん! 」
私は香織さんの衣装に手を出した。
「まずはスカートから! 」
ばっ!
真下にスカートを下ろした。
観客席からはどよめきが起こった。
「い、いやー! お、お嫁さんに行けないーー! 」
「大丈夫ですよ。水着ですから! 」
そして脱がしたスカートを観客席に向かって
「欲しい人ーー! 」
と、投げ込んだ。
「芽衣ちゃん! ちょ、ちょっと! 」
パニックになっている香織さんをヨソに私は香織さんの後ろに回り…。
「さあ! いきますよー! 」
ばっ!
観客席からは明らかに男性の「おおー!」という声が聞こえた。
それもそのはず。
水着とはいえ香織さんの豊満なバストが目に飛び込むのだから仕方ない。
「さあ! 脱ぎたての衣装を欲しい人ーー! 」
同じく投げ込んだ。
そんな調子で雨にもかかわらず観客がステージ前に出てきた。
香織さんは少し棒立ちになっていた。
「香織さん、香織さん! ステージ、あたたまりましたよ」
「あ…。う、うん、そうだけど…。」
「さあ! HKシスターズのデビューライブ! 始まるよーー! 」
私は割れんばかりの声でコールをした。
ライブが無事に終わった。
新曲二曲とミニトークをして小一時間だけど楽しかった。
「香織さん、お疲れ様です」
二人とも雨ですっかり濡れていた。
わたしも香織さんにタオルを渡した。
「HKシスターズの初ライブ、お疲れ様でした。大成功でしたね」
「う、うん…そーだけどね、芽衣ちゃん」
「なんか私、ひと皮むけた感じになっています」
昨年の秋に飛び入りでしたライブと比べると段違いにのびのびとしているのが分かる。今日はとにかく楽しかった。
「なんて言えていいか分かりませんが、今日はとにかく楽しかったです! 」
「それは良かったけどね。芽衣ちゃん、今一度自分の姿を再確認しよーか? 」
「はい? 」
香織さんに言われて自分の姿を見た。
一気に全身が真っ赤になった。
「な、な、な、な、なんで水着ー! 新しい衣装は??」
「ステージで脱いじゃったの覚えていないの? 」
そ、そー言えば…。
我を忘れてしてしまったかも。
「衣装も私の分も含めて投げちゃうし」
「え? もしかして香織さんが水着なのも…」
改めて香織さんを見た。私には無い豊満なバストが目に飛び込む。
「芽衣ちゃんに剥ぎ取られちゃったのよ」
う、うわあーー!
や、やっちゃった。
「ご、ごめんなさーい! 」
「ステージは大成功だったから結果オーライだけど…後で謝りに行こうか。衣装、また新しいの作ってもらわなきゃ」
「はい…」
や、やっちゃった。
「でも、今度は私の番だね! 剥ぎ取られる芽衣ちゃんを見たいなぁ~」
「もう言わないで、香織さんー!」
なんかトラウマになりそうです…。

トツドル!

デビューライブ⑵

「で、でも大丈夫なんですか? あんな約束して…」
私は一気に不安になった。
香織さんはいつも調子で
「さっきの約束? 大丈夫だよ、芽衣ちゃんなら。それにねー、今日からは新衣装になります! 」
「え! この衣装じゃないの⁈ 」
また着替えるの⁇
バッチリと決めたのに。
「じゃーん! A◯B衣装からクールな黒と赤の衣装になります。ちなみに黒は私で赤は芽衣ちゃんね」
衣装自体は変わらずに色がはっきりと黒と赤の2色になっていた。
私が赤…。
「えーと、つまり…」
「私達のイメージカラーが決定していたのよ」
確かにイメージカラーはアイドルには大事!
個別推しには更に重要な要素!
しかも香織さんが黒衣装なんて着たらボディラインが更にはっきりと分かる。しかもクール。
「か、カッコいい…」
思わず声が漏れた。
「芽衣ちゃんもかわいい」
「か、からかわないでくださいよぉ~」
慌てて新衣装に着替える。
「でも、文字通りにこのステージをキッカケにアイドルとして一皮むいてみる? 」
ドキッ!
ひ、一皮むくとは?
「うふふ。楽しみー」
香織さんの含み笑いはいつもコワイです。
「ちなみに今年の市政の予算から私達の活動運営費が計上されたみたいだけど…」
香織さんが私の耳元に語りかける。
話の内容も凄いけど香織さんの囁きが私を骨抜きにしている。
「か、香織さん、ちょ、ちょっと…」
違う意味で昇天しそう。
「とまぁカンタンに言っちゃえば、人口増加にアイドルで一発当てようというお偉いさんの現われだね」
そんなことを知ってか知らないか香織さんは私から離れて軽~く言い切った。
し、市政って!
「わ、私、が、頑張ります」
「言っているセリフはえらいけど身体は思い切りギブアップしているよ、芽衣ちゃん」
「だ、だって、そんな責任、私は負えません」
本音は間違いなく無理だ。
「と、とにかく衣装も新たに私達 HKシスターズの新しい門出に…」
ザーーーー!
いきなり雨ーー!
「HKシスターズの配置、お願いします」
無情にもスタッフからのコールが。私達は急いでステージに立つがやはり止まない。
中止かなぁ…。
私の頭をある言葉がよぎった。