トツドル!

デビューライブ!⑴

本日はデビューライブの日です!
その楽屋というか…仮設テントの中でこの人は言い放つ。
「芽衣…いくらなんでも嘘は良くないよ」
ショーナこと野里翔菜が切り出した。
「アイドルライブをやるっていうから応援を兼ねて来たんだけどさ、パッと見た感じとても見えない」
「い、いきなり友達にえらい言われよう! 」
な、泣きたい!
そりゃ今迄は逆の立場だったけど今はもうアイドルやっているのに…。
「わ、私だって少しでも見栄え良くしようとダイエットしたりメイクも色々と覚えてきたのに何が足りないっていうの⁇ 」
高校入学と同時に始まったアイドル活動の為に今迄は見向きもしなかったファション誌を見たりネットなどで勉強してきたのに…。
「ズバリ! その衣装! 見た目小学生の入学式に着ているヤツやん」
「えー! A◯Bぽくて気に入っているのに⁇ 」
思い切りショックを浴びた。
「イタいコスプレイヤーしか頭に残らないよ、それ」
こ、コスプレ…。
「と、とにかくアイドルは服じゃないんだからね」
「はいはい、分かった分かった」
適当な返事をして翔菜は反対方向に向いた途端に香織さんのおムネに顔をうずめる。
「だ、大丈夫ですか? 」
「覚えた! 」
「え? …確か芽衣ちゃんのお友達の…」
なんて羨ましい。私ですらないっていうのに!
「あ、は、はい! 野里翔菜です」
「改めて私は芽衣ちゃんのパートナーの南畝香織といいます。今日は楽しんでくださいね」
このオーラが欲しい。
香織さんは翔菜の手を握った。
「ごめん、芽衣…。私が間違っていたよ。アイドルは服じゃない! 」
「翔菜…せめてこっちを見て言ってよ」
香織さんに手を握りしめられたまま固まっていた翔菜にツッコミを入れたのは言うまでもない。
「でさあ、HKシスターズは芽衣と南畝センパイのユニット名と分かるけどさ、『ろこどる』って何? 」
え…?
「まさか翔菜、知らないの⁇ 」
「うん」
やっぱり知らずに来たんだ。
まぁ、普通はそういうもんかなぁ。中学生からライブに出入りしていた私から見たら新鮮な感じだった。
「『ろこどる』っていうのはそもそも地方アイドル…つまり『ローカルアイドル』の略語で、地域活性化の一助になればいいなぁ~という思いから立ち上げた…その地域密着型アイドルっていうことなの」
「ま、マジ⁈ 」
「うん。だから私達の活動はライブというよりも姫川市の名産や場所や歴史紹介の方がメインなの。だからライブも無料なんだよ」
「し、知らなかった。っていうことはゲストのイケメンアイドルっていうのは? 」
イケメンアイドル?
だ、誰だ? そんなデタラメな情報を吹き込んだのは?
だいたいの予想はついている。
「来ない、来ない」
「わぁー、う、嬉しいなぁー。実質、芽衣達のソロライブかぁ…」
「あ!い、いま、本気でテンションガタ落ちしてるでしょ! オシャレしている目的そっちだよね⁉︎ 」
コレが現実かぁ…。
まぁ、素人同然の私がするんだから仕方ないかぁ…。
「こらこら翔菜! 芽衣も頑張っているんだ。そんなに落ち込まない」
吹き込んだ張本人がキター!
「あ! 芽衣おはよう。今日はみんなで来たよ」
「芽衣ちゃん、おはよう」
美里とサツキの二人が一緒に来ていた。
「み、美里。ありがとうって言いたいけど、翔菜に何を吹き込んだの? 」
翔菜の落ち込みが凄い。
「あー。翔菜はああでも言わないと来ないかなぁ~というか、隣町でやっているイケメンアイドルのファンだからなぁ。ワザと芽衣達のゲストということで騙した」
キッパリ!
潔い。
「あ、あのねぇ。翔菜、テンションガタ落ちだよ」
翔菜の気持ちも分かる気がする。
「か、翔菜ちゃん、芽衣ちゃん達も頑張ると思うからライブ見よう。友達なんだよ」
「さ、サツキ、ありがとう! 翔菜も騙されたと思って見て! 絶対に後悔させないから! 」
何も保証がないのに意気込んでみた。
「まぁー、ダチの晴れ舞台だしちゃんと観るよ。まぁ、頑張れー」
国語の授業で棒読みをする小学生みたいに翔菜は言うた。
か、完全にやる気ゼロだぁー。
「そうですね…ちゃんと観ないと後悔しますよ。なんだってステージ上での芽衣ちゃんは私よりもずっと目立つんだから! 」
「は、はい⁈ 」
か、香織さん⁉︎ め、目立つって…。
やはり香織を見た瞬間に美里とサツキも食い入るように見る。
「もし私のいうことが嘘だったら芽衣ちゃんを好きにしていいから! 」
香織さんは翔菜の手を握り締めた。
「ちょ、ちょっと香織さん⁉︎ 」
な、なんの約束ですかぁー⁉︎ また滅茶苦茶な予感しかしないんですけどー⁉︎
「乗ったぁ! 」
「え? て、テンション上がった! 」
「芽衣! 今日はしっかり見るからね! 失敗したら一週間、宿題お願いね~」
「それはお断り」
な、なんなの?
「それじゃ翔菜がハイテンションのままの間に私達も客席に行くわ」
「芽衣ちゃん! ファイト! 」
「う、うん。お願いね」
三人はテントから出て行った。
私は思った。
「一週間宿題だけは避けなければ」
心底、そう思った。

投稿者:

創作人 Wordpress

小説と詩を書いています。 「月の詩」シリーズをAmazonにて販売&配信中です。

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