これが私の生きる道?!

第一章 お笑いなんて、大嫌いっ!!⑸

 控え室に入るなり、奈々子は瑠伊に問い掛けた。
「瑠伊さんって、どうして東大に決めたんですか? 」
「え、なんでって」
 瑠伊は、奈々子から手渡された台本を読みながらメイクに取り掛かっていた。髪を結うている白のリボンをほどいたら腰まであるロングヘアーが姿を現す。そして、普段はコンプレックスを感じている眼鏡をつけ、メイクも嫌だけど厚化粧をする。
 これで、メイクは終了である。
 奈々子はその変貌ぶりにも驚くが、
「だって、将来はお笑い‥‥」
 言い掛けたところで、瑠伊は奈々子の口を押さえ込んだ。
 瑠伊は微笑んだまま、
「ナナちゃん。今日の私は、ただのピンチヒッターよ」
 と、言うだけ。
 すぐに押さえてた手を放した。
 奈々子にしてみれば、瑠伊も一太郎もやはり親子なんだなぁ〜と、怖いくらいに理解が出来たであろう。
 台本を読み切った瑠伊が言う。
「私、お笑いなんて大嫌い。今度もその話したら、スゴイ事になるから」
「は、はい‥‥」
 奈々子は、今度は自分の身の安全を最優先にした。
 後藤奈々子の教訓。
 ヘタに逆らわない方がいい。
 これに尽きるのである。
 奈々子は、慌てて話題を変えた。
「でも、東大はどうしてなんですか? 」
「あー、東大ね」
 瑠伊は真顔で聞く奈々子に、少し頬を赤く染めた。
 奈々子は不思議そうに、そんな瑠伊を見ていた。
「簡単に言っちゃうと、将来の為かな」
「将来? 」
 殺伐とした答えに、奈々子は首を傾げた。「将来、何かあるんですか? 」
 突っ込んだ質問に変わる。
 瑠伊は、見事に狼狽した。
 何も考えてもいなかったからだ。
 慌てて、
「ナナちゃん。例のこと、今日実行するけどイイ!? 」
 闇に葬り去るつもりで、話題を変えた。
 それも一太郎が聞いたら凄い話だ。
「それは別にいいですよ‥‥」
 間の悪い返事。
 続けて、
「ただ、いろんな意味で難しいですよ」
 と、後の責任は取らないような口調だ。
「いいの、いいの。とにかく、こんな生活から離れたいから。このまま家にいたら、お笑いタレントにされてしまうから」
 瑠伊にとっては、情況なんて全く関係なかった。
 奈々子は、呟いた。
「‥‥東大生の芸人って、話題性あるのにな」
 決して、瑠伊には言えない。
 もし言ってしまえば、瑠伊の制裁が来ることが分かっていたからだ。
「どうしたの? 」
「い、いいえ。楽しみだなぁ〜って」
 笑って、誤魔化した。

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創作人 Wordpress

小説と詩を書いています。 「月の詩」シリーズをAmazonにて販売&配信中です。

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