これが私の生きる道?!

第一章 お笑いなんて、大嫌いっ!!⑶

 同時刻。
『第五回 新人漫才コンテスト』の会場。 瑠伊の父、一太郎は静かに電話の受話器を置いた。
 ピピ、ピィーーー。
 電話から出てきたテレホンカードを財布にしまう。
 一太郎の後には一人の背丈の低い女の子がいたが、存在すら無視した状態で、
「やはり、我が娘。父の危機には、必ず助けてくれる」
 感無量という言葉を見事に表現仕切った顔で涙ぐんでいた。
 だが、果たしてそうなのだろうか!?
 女の子は首を傾げていた。
 というのは、一太郎と瑠伊のトークが、それはそれはバッチリと女の子の耳にまで届いていたからだ。
「社長、いいんですか? 」
 女の子は、心配そうに聞いた。
 そりゃあ、そうだろう。
 彼女にしてみれば、素人でしかも自分が所属する会社の社長の娘と組む羽目になるのだから。
 それも駄目になれば、彼女の今日の収入はゼロということなのだ。
 まさに生命を賭けている。
 一太郎は高笑い、彼女の肩を勢い良く叩きつけ、
「大丈夫、大丈夫! あと三十分もすれば来るよ」
 大船に乗りたまえという口調で言ったが彼女にしてみれば、
「それじゃ、打ち合せも出来ません! 台本を読ませるだけじゃありませんかっ! 」
 芸人にしてみれば、真面目すぎていた。
 一太郎は、そこが気に入らなかった。
 一太郎曰く、
「君、台本だけが芸じゃないんだよ。時にはアドリブが必要さ」
 これが一太郎のモットーであり、彼の所属している芸人やタレントに口癖の様に言っている台詞なのだ。
 続けて、一太郎は言う。
「それに我が娘は、君の相方よりいいボケを言うよ」
 自身有りげに胸を張る。
 親馬鹿か、そうでないとすればかなりの自信家である。
 女の子は止せばいいのに、
「それでも、やはりですねぇ……」
 一太郎に口答えしかけたところで、いきなり女の子の顔の真横に刃渡り十五センチぐらいはあるバタフライナイフが、コンクリートの壁に突き刺さった。

投稿者:

創作人 Wordpress

小説と詩を書いています。 「月の詩」シリーズをAmazonにて販売&配信中です。

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