これが私の生きる道?!

第一章 お笑いなんて、大嫌いっ!!⑵

もちろん志望は、東大である。
 その東大志望の彼女にも不安材料がないわけでもない。
 トゥルルル……、トゥルルル。
「来たか」
 絶対に触れたくないと百パーセント言える顔で、瑠伊は電話を見ていた。
 トゥルルル……、トゥルルル。
 トゥルルル……、トゥル。
「止まった」
 胸を撫で下ろす。
 アイスも棒だけになっていた。
 瑠伊は再びベッドに身体を預けようと腰を下ろした後、今度は携帯電話の着メロが鳴りだした。
 ちなみにメロディーは、TM NETWORKの『GET WILD DECADE RUN』である。
 渋々、取りあえず、携帯を手に取った。
「はい、篠原です」
 普段なら、こんなにも他人行儀にはならないだろうが、この時は警戒心一杯だった。
 そして運の悪いことに、瑠伊の警戒している最悪の事態というのは、ほぼ百パーセントに近い確率で当たってしまうのだ。
『おー、瑠伊か。今、暇か?』
 電話の主は、瑠伊の父であり篠原プロダクションという芸能事務所を経営している、篠原一太郎からだ。
 パソコンのソフトのような名前である。
 瑠伊は怪訝そうに、
「高校三年の夏に暇なんてないの」
 父の問い掛けに速答した。
『でも、電話に出れるだけ暇だな。丁度いいから、また例の場所に来てくれんか? 一人足りなくて困ってるんだ』
 やはり、そう来たか。
 頭の中では、すでに話が見えていた。
 それでも、瑠伊は抵抗を試みる。
「困るのなら、一人でやらせれば!?」
『それがなぁー、コンテストの再登録が出来ないんだ』
「パパ、社長なんだから出来るでしょ!それに明日は大事な全国模試なのよ、模試」怒鳴る声が大きくなる。
 同時にお隣さんから、「うるさい!」と苦情が出た。
 瑠伊はひたすら謝り、
「ほら、怒られちゃったじゃない!」
 またしても携帯に怒鳴ったが、その時は見事に通話不能になっていた。
 携帯を切る。
「逃げたか……」
 瑠伊は、静かに呟いた。
 グシャ。
 同時に、瑠伊が壊した携帯電話の数が十台目になった。

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創作人 Wordpress

小説と詩を書いています。 「月の詩」シリーズをAmazonにて販売&配信中です。

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