トツドル!

突然アイドルになりました

「えーと……確かにここだよね」 私はとある建物の前に立っていた。 建物の名前はRASSOって大きい立体看板にあった。「へー、今日はイベントかぁ……姫川市公認アイドルって初めて聞いたなぁ。私としたことが迂闊だったよ」 隣に掲げられていた垂れ幕の方が目に入る。「とにかく伯父さんを探さなきゃ! 」 建物の中に入った。 一階は近所のスーパーと同じ店舗がテナントに入店している。他には保険会社、マッサージ店、喫茶店ぐらい。 私は案内所の人に伯父さんの名前を言うと何故か慌てた表情で通常のエレベーターと違うスタッフ専用エレベーターに一緒に乗せられ着いたのが「四階 映画館になります」 まさに野里さん達と行こうと約束をしていた映画館だった。「さ、こちらへ」 とスタスタと早歩きに近い歩きで奥へと行く。 「こちらでお待ち下さい」 と案内するだけでさっさと私だけを置いて出て行った。「え、え⁇ 」 ぽつんと立っていたら、気配を感じる間も無く「芽衣、来たよーだな」「伯父さん! 」 リクルートスーツを着た伯父さんが後ろにいた。「さて時間がないからそのままついてこい」「え⁇ 」 また歩き⁇ 黙って歩いた先は映画館の中! しかもご当地アイドルのお披露目ステージだった。「伯父さん、私はスタッフとして案内役⁇ 」「いや違う」「なら、司会さんの補助? 」 これなら役得! でも違うという。「うん。ピンクかと思ったが、ブルーか。まぁ、その方がいいな。しっかし、お前中途半端な体型だなぁ」 それどころか、いきなり私のナリを言うか! このセクハラ親父‼︎ 「まぁ、それはそれとして……今日呼んだのはこの後で……」「この後で? 」「あそこで喋って歌って踊ってもらう」「はぁい⁇ 伯父さん、今なんて⁇ 」 伯父さんが指差す先はステージだった。 私はまだ理解していない。「だから、姫川市ご当地アイドルとしてあのステージに立ってもらう! 」 沈黙。 じっと伯父さんを見つめ頭の中の中を整理する。 ステージ⁇ アイドル⁇ 私が⁇「いやいや、伯父さん本気⁇ 無理無理無理無理……」 背を向けて帰ろうとしたら「イイのか?そんなことを言って。今日着ている服は前に俺が渡した金で買ったんだろ? 」 まぁ……そーです。「お金無いと遊ぶことも出来なくなるんだろ? 」 まぁ……そーです。 痛いところを突くなぁ。「今日の事はお前の母さんに了解取っているから」 お、お母さん! グルだった!「それにお前、小学生の頃にアイドルになりたいって言ってただろ? 」 今は追っかけで十分です!「それに今日のギャラで買った服だから市民の税金なんだぞ、それ」 いきなり重い!「今帰れば「税金ドロボー」なんて言われちゃうかもなぁ~」 そ、それだけはやめてー!「伯父さん、ハメた……ね」「高校生になってダダでお金が貰えるなんて考えるお前が悪い! 今日の分はしっかりとやってもらうぞ」「……はい」 観念するしかなかった。「と言ってもお前さんに決まったのは俺じゃないんだがな」「え? 」 伯父さんじゃない⁇「企画責任者は確かに俺だがメンバー選考は今から会う娘がお前がお気に入りらしい……」 私の知っている人かなぁ~⁇ 芸能人に知り合いなんていないんだけどなぁ~。 でもご指名までしているなんて……以前に会ったかなぁ~⁇ 「もしかして動画のファンに芸能人が⁇ 」 小声でつぶやく。 ステージから出て足音しか聞こえない通路を歩いて「なんかたらい回しみたい」 と、はっきりとつぶやく。「悪いな。控え室が離れててな」「ステージ裏にはないの? 」「裏は映写機の設備室しかない」「はぁ」 歩いて5分。「さ。ここが今日の控え室だ」 会議室とプレートが付いている部屋の中に入った。 同時にいた!「お久しぶり! 芽衣ちゃん! 」 知り合い、イター!「元気だった? 高校生になった感想は⁈ 」「の、南畝さん! 」 だった。「一日一善アイドルが3月末に活動停止しちゃうし暇だから姫川市公認アイドルに選ばれたけど一人はイヤだから芽衣ちゃんもメンバーに推薦しちゃった」 あ、あのですねぇ。「と、まぁ、そんな理由だ」「お、伯父さんー!でも南畝さん、なんで私⁇ もっとお知り合いの方はいなかったのですか? 」 そうよ! もっと慣れている芸能人はいるハズ。「ダメダメ。みんな他に掛け持ちしちゃったし、私のダンスについていけるの芽衣ちゃんしか心当たりがないし」 小刻みに手を振って全否定。「私、普通ですよ」「大丈夫大丈夫。今は普通の人が萌える時代だから」 って、絶対に私⁈ 相変わらずのマイペースさに呆れてしまう。「歌やダンスなんて今から覚えられませんよ⁈ 」 そうそう。 いきなりステージなんてあり得ない!「今日はこの曲だから」 南畝さんは自前のイヤホンを私に渡した。「?」 曲を聴く。「ね。今流行りの曲だから大丈夫」「いいんですか? 」「オリジナル曲のないご当地アイドルはみんな最初はしているから」 さらりと言い切った。ステージはなんとかやれそうな感じになった。 ただ私は未だに釈然としない。「伯父さんも良く私を推したね」「だから違うって。南畝さんの推薦」「そうだけど……」「しかし去年の秋のイベントに参加してたなんて初めて知ったぞ」「あれは話の流れでやってしまっただけで……」 そうだ。去年の秋のイベントはたまたまだ。「でも言ったよねー。もうあんなステージはしたくないって。だから今日がリベンジよ、芽衣ちゃん」「南畝さんはいきなりすぎます! 」 「ゴメン、ゴメン。本当は先月言いたかったけど引き継ぎや手続きで……」 と、悪びれることもなくかる~く和むように言う。「もう! 」「ふくれている芽衣ちゃんもかわい」「し、知りません! 」「うふふ」 なぁーんか憎めない‼︎ かわいすぎる! 嗚呼! これが対話タイムイベントなら最高なのに。 独せん場だし、営業スマイルじゃない素のアイドルと通話しているなんてヲタには最高! 半ば暴走しそうな気持ちを抑えつつキリとした途端に驚き。「今日の気持ちを聞かせて下さい」 いきなりマイクを向けられた。 だ、誰! 口を金魚みたいにパクパクとさせてしまった。「今日は朝から緊張していますが私達も精一杯やらさせていただきます! 」 私の肩に手を伸ばした南畝さんが応えた。 それから約5分間の間、すらすらと応える南畝さんを見ながらただ相打ちしか出来ない私は既に疲れきってしまった。 なんとなく取材が終わった。
だけどインタビューに応じた南畝さんはやはり慣れていた。「芽衣ちゃんは初めてだからびっくりしたんだね」 と、フォローをしてくれたけど何も応えられない自分がイヤだった。 後で伯父さんから今日のイベントの事の書類を渡されたけど……。「わかんないよー」 段取りを聞きながら読んだけど本番出来るのかなぁ~と思ってしまう。 立つ位置については「床にテープを貼ってあるからそこに立つ様に自然に行くのよ」 と、南畝さんのアドバイスを色々と聞きながら確認するだけで半分くらいはパニックになっていた。「色々……大変なんですね」「ならやめちゃう⁈ 今ならまだ間に合うよ」 さらりと。 少しムカついた。「辞めません! やる以上、しっかりとしなきゃ!」 ばっさり。 言い切ってしまった……。「なら、頑張ってもらわないとな」 伯父さんも事務仕事をするみたいな口調で「決定と」パンと判を押した。「決定⁈ って、今ぁー? 」「ああ。お前は未成年だから本人と保護者の同意が得られないといけないからな。それにお役所仕事は色々と書類が必要でな、企画書も同意書もちゃんと揃えないと何も出来ないからな」 と。「ちなみに保護者の同意はこの前にとってあるから問題なし」 そういえばそうだった。「で、たった今、お前が了承したから正式なメンバーとして決定としたわけ。もう来年の3月までは入院する程の病気か怪我をしない限りは後に引けないからな」「はい……」 半ばのせられてしまった……。(続く)

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創作人 Wordpress

小説と詩を書いています。 「月の詩」シリーズをAmazonにて販売&配信中です。

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